Romanian Deadlift
ルーマニアンデッドリフト(RDL)
◼️目的
ハムストリング、臀筋、腰背部、上背部の筋力向上
トレーニング名の由来は、【Nicu Vlad】という物凄く強いルーマニア人ウエイトリフターが行っていたことが理由です。この種目では、まずバーベルをハングポジションの高さでラックから外し、ラックが干渉しないよう後ろに下がって、バーベルを脛の真ん中あたりまで下ろし、ハングポジションまで引き上げます。この動作はデッドリフトとは違います。引き上げ動作をボトムポジション(ウエイトを一番下げた位置)から始めるのではなく、立った姿勢から始めるという違いがあります。
◼️ハングポジション
バーベルを握って引き上げ、腕と膝をまっすぐ伸ばし、胸を張った姿勢。ハングポジションでは、腕を内側に回旋させるように意識することで肘をまっすぐに保てる。バーベルを握って腕を下ろした姿勢では、肘がこの状態になるよう意識する。
RDLにはデッドリフトと異なる重要な特徴が2つあります。RDLでは膝がほとんど伸びた状態から動作を始めます。完全に伸ばしきった状態ではありませんが、膝は非常に曲がりが小さい状態で大きく変化しません。そのため、RDLの動作では膝を伸ばすために大腿四頭筋が力を出す場面がないのです。大腿四頭筋はアイソメトリック(等尺性筋収縮)に働いて膝の角度を前から固定する以外に役割がなく、RDLは股関節の伸展に特化した種目です。ハムストリングと大臀筋がRDLの主動筋となります。
デッドリフトではコンセントリック収縮(短縮性筋収縮)でバーベルを地面から引く動作を始めとします。バーベルをハングポジションまで引き上げれば終わりです。エキセントリック収縮(伸張性筋収縮)が強調されることはありません。それに対して、RDLはスクワットのようにエキセントリック収縮から動作が始まり、コンセントリック収縮へと続きます。膝と股関節が伸展した状態から動作が始まり、体を屈曲させながらバーベルを下ろしていきます。そして、伸張反射を経てコンセントリック収縮で体を伸展させていきます。このことが一番よく現れるのがジャンプです!ウエイトルームで行うトレーニング種目の大半は、伸張反射をうまく使ったり、強調するチーティングをすることができます。しかし、RDLでは伸張反射が起こるのが本来の動作でありチーティングではありません。他には、スクワット、ベンチプレス、ジャークにもこのことが当てはまります。RDLでは大腿四頭筋の力を使うことができませんが、ボトムポジションで弾みを得ることで大きな重量を扱うことができます。RDLでの伸張反射の影響は股関節伸展筋群にとどまります。
RDL重要点
①ハングポジションよりも少し低い位置にラックのピンを設定してはじめます。
②クリーンを行うときと同じ手幅でバーベルを握り、ラックに干渉しない最低限の距離を取れるだけ後ろに下がります。
③スタンスはデッドリフトと同じで、踵を20㎝〜30㎝ほど開き、つま先を少し外に向けます。胸を張り、正面に視点を定めます。
④RDLでは背中がまっすぐ固定された状態で股関節伸展筋群が働くことに最も重要な意味があります。膝を少し曲げ大腿四頭筋を緊張させますが、これはバーベルの太ももに対する位置が5㎝ほど下がる程度にとどまります。軽く曲げた膝の角度はほとんど変わりません。
⑤バーベルを下ろし始めるときには、お尻を後ろに引いて股関節を屈曲させます。バーベルを脚から離してはいけません。同時に肩をバーベルよりも前に出してプル(Pull)動作の姿勢に入ります。腰が丸まらない範囲で下ろせるところまで下ろします。
⑥バーベルを引き上げていくときには胸と背中の姿勢を固定し続け、バーベルを脚から離さないことが重要です。バーベルをハングポジションまで引き上げたら大きく息を吸います。
⑦バーベルを下ろすときは「すべてを後ろに持っていく」という意識を持つことが重要です。体重は踵にかけ、膝を後ろに引き、バーベルが脚から離れないように後ろに引き付け、お尻を後ろに引きます。肩がバーベルの前に出る以外はすべてが後ろに動きます。
⑧高重量のデッドリフトを失敗する直接的な原因になる部分を鍛えることが可能です!デッドリフトとクリーンの補助種目としてRDLはとても優れています。